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インドネシアのセセリチョウの仲間(1)

セセリチョウの仲間は日本に産するものは37種程度だが、東南アジアでは種類が多い、インドネシア全土で何種いるかは調べていないが、「タイ国の蝶Vol.1(2011,木曜社)には、300を超える種類が並んでいる。鱗粉が剥げやすいので、注意して採集しないと同定が難しいことがある。大型の種類も見られ、夕方日没の頃に敏速に飛ぶ姿を見る事もある。これまでに採集した一部を紹介しよう・

 

 

アフロディテキバネセセリ Burara aphrodite

 

Burara 属のセセリは東南アジアで16種いるとされ、大型の種類である。ここに示したアフロディテキバネセセリは展翅した開長が7㎝を超えている。この種はスラウェシと周辺の島に分布するもので、この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集した。

 

 

モンキバネセセリ Burara oedipodea

 

Burara 属を代表する種とされ翅を広げると5㎝以上ある大型のセセリだが、裏側のオレンジ色の鱗粉は網の中で暴れると剝がれやすいので注意を要する。インドからタイ・マレーシア・インドネシア・フィリピンと分布は広い。前翅・後翅の縁毛が鮮やかなオレンジ色をしている。この標本はスラウェシ中部のパルで採集した。

 

 

 ウラスジキバネセセリBurara gomata

 

ウラスジキバネセセリ 左:表面     右:裏面

この種も大型のセセリで、裏面の翅脈が青緑色を帯びている。分布は広くインド、ミヤンマー、インドシナ半島、中国南部、マレー、インドネシア各地、フィリピンに及ぶ、この標本はスマトラ北部で夕方燈火の近くに飛来してガラス戸に来たものを捕まえた。

 

ロンギコルニスショウガセセリ Ancistroides longicornis

 

後翅の下半分が黄色なセセリはキシタセセリ(Mooreana trichoneuraがいるが、前翅に白い斑紋がある。この標本には前翅に白斑は見られず、バネーライトの論文にあるショウガセセリの仲間であることが判った。これまでスラウェシの北部では記録があるが、この標本は中部のパロロで採集し、新たな産地の記録になるかもしれない。

 

 

エグリバセセリ  Odontoptilum angulata

 

翅の形に特徴のあるエグリバセセリの仲間は東南アジアに3種だけとされるが、この種エグリバセセリはインド・スリランカからタイ・マレー・インドネシア各島・フィリピンと分布が広い。この標本はスラウェシの中部パロロで採集したが、スラウェシには他のエグリバセセリは分布しないとされる。スマトラでは次にあげるシロオビエグリバセセリも見られた。

 

 

シロオビエグリバセセリ  Odontoptilum pygela

 

シロオビエグリバセセリは表面に縦に白い帯が前翅後翅を貫いて走り、後翅裏面も殆ど白く、縁の凹凸も顕著である。タイの半島部からマレー・スマトラに分布するが、スラウェシには見られない。この標本はスマトラのカロヒルで採集した。

 

 

 

プラテニアオバセセリ Choaspes plateni

 

プラテニアオバセセリは日本産のアオバセセリと同じぐらいの大きさで、似ているが、後翅末端のオレンジ色の部分が広く、内側まで広がっている。インドからインドシナ半島・マレー・スマトラ・スラウェシなどに分布しており、この標本は北スマトラのカロヒル産のものである。

 

 

ニセコモンセセリ Pseudocoladenia dan

 

ニセコモンンセセリは中型の茶褐色のセセリで1属1種とされ、北インドからインドシナ半島・マレー・スマトラ・スラウェシ・など分布は広い。この標本は北スマトラのカロヒルで、熱帯雨林の縁で採集した。

 

 

ウスキオビヒメセセリ Halpe toxopea

 

Halpe属のセセリは小型のものが多く、わが国には分布しないが、東南アジアには35種もいる大きな属である。タイでは半島部に記録があるが少なく、マレー半島とスマトラには普通種と思われる。この標本はスマトラ北部のカロヒルで採集したが、農村部周辺で得られた。

 

 

オオシロモンセセリ Udaspes folus

 

オオシロモンセセリはわが国の沖縄にも分布するが、インドからインドシナ半島、中国南部マレー、スマトラ、ジャワ、バリなどに分布するが、ボルネオ、スラウェシ、フィリピンにはいないとされている。大型で特異な白い紋があり、同定に苦労しないチョウである。この標本はスマトラ、カロヒルで採集したものである。