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東南アジアのブルーバタフライ:インドネシアのシジミチョウの仲間(1)

大きなシジミチョウ

インドネシアにはArhopala 属のシジミチョウの中にヘラクレスムラサキシジミというチョウがスラウェシから東の島にいて、採集することがあるが、翅を広げた開長は60㎜ぐらいあり、ギフチョウより大きく、春型のアゲハチョウぐらいの大きさのシジミチョウがいる。

この写真を示す。オスの表面は金属光沢のあるブルーで、東洋のブルーバタフライと云える。


Arhopala ercules  写真の下にcmのスケールがあるので、大きさが判ると思う。翅の表面は紫がかった光沢があるブルーで、美しいチョウである。

「東南アジア島嶼の蝶」ではシジミチョウの仲間は扱われていないので、外国の図鑑を調べるとダブレラのオーストラリア地域の図鑑に載っているが、分布はパプア(西イリアン)とマルク諸島のハルマヘラ・バチャン・アンボン・セーラムなどになっている。しかし東洋区のダブレラの図鑑には載っていない。それをスラウェシの南部で取れますと永井一徳さんに教えてもらい。案内してもらったバンチムルンでやっと採集することができた。

 

次にこのチョウの裏面とメスの写真をお目に掛けよう

左:オスの裏面               右:メスの表面

Arhopala pseudocentaurus ケンタウルスムラサキシジミ

 




ケンタウルスムラサキシジミ 左:オスの表面  右:オスの裏面

このチョウも大型のシジミチョウで、展翅した開帳は4850mmぐらいある。前にあげたヘラクレスより濃いブルーで、尾錠突起は太く短い。前翅裏面の中室にある3個の茶色紋が白い線で縁取られるのが目立つ。バリ島南部のウルワツ寺院の近くで、アカガシに似た木を叩いたら数匹飛び出し、すぐ近くに止まり、採集できた。朝夕は活発に飛ぶが、日中は静止しているらしい。分布はセイロン・インド・アッサムからインドシナ半島・マレー半島とジャワを除くインドネシア各地とダブレラの図鑑には書いてあるが、バネ・ライト(Vane-Wright)ら2003のスラウェシのチョウに関する論文の種名リストには入っていない。大塚一壽氏のボルネオのチョウにも載っていないので、インドネシアの分布は限られていると思われる。タイ国の蝶(2014、木曜社)には人里に近い2次林で多く見られ、タイの北から南まで分布が広いと書いてある。

次にこのチョウのメスを調べて見よう

ケンタウルスムラサキシジミ  左:メスの表面, 右:メスの裏面

メスの表面は前翅、後翅とも黒い縁取りがあり、ブルーの表面は狭くなっている。またブルーの色調も異なり、オスより明るい色になっている。

オスは良く見かけるが、メスは見かけることが少なく、採集し難い。 

Arhopala araxes アラクセスムラサキシジミ

 

 

アラクセスムラサキシジミ 左:オスの表面、  右:裏面

このチョウは開帳4mmぐらいのブルーの表面に光沢があり、前縁は色が濃くなっており、色が美しい種類である。分布はスマトラ・ジャワ・スラウェシ・小スンダ列島になっている。この標本はスラウェシの南部バンチムルンで採集したもので、スラウェシ以外のものはダブレラの図鑑では別亜種になっている。

Arhopala kinabala オオマルモンムラサキシジミ

 

左:オスの表面             右:裏面

このチョウの学名はキナバルになっているから、ボルネオのキナバル山から取られたと思うが、裏面の白い線で縁取られた丸い紋が非常に特徴的で、木曜社のタイ国の蝶第3巻ではこの丸紋にちなんで和名を付けたとおもわれる。展翅した開長は42mmで中型の種類である。分布はマレー半島・ボルネオ・スマトラで、タイの図鑑にはマレーシア国境に近いところで得られるとしている。裏面の斑紋は特徴的で同定に迷うことはないとされている。

この標本はスマトラのカロヒルで20199月に採集したものである。オスでも前翅の先端は黒い縁取りがあるが、表面のブルーは光沢がある。しかし、スマトラでは得られたのはこれだけで、多い種類ではないと思っている。


Arhopala quercoides ケルコイデスムラサキシジミ



このケルコイデスムラサキシジミはスラウェシ特産のチョウで,開長42㎜で、中型のアロパラ属のチョウである。尾状突起は長い一本の上下に短いものがあり、よく見ると3本に見える。このチョウの分布は、ダブレラの図鑑にはスラウェシとしか書いてないが、Vane-Wrightらはスラウェシ南部としている。この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで得られたのもで、まだメスしか採集していない。

Arhopala irregularis イレギュラームラサキシジミ

左:オスの表面               右:オスの裏面

このチョウもスラウェシ特産でダブレラの図鑑にはスラウェシとバンガイ諸島(スラウェシの東に接する島)に分布するとされる。尾状突起が3本あり、開長40㎜ぐらいの中型種である。裏面の複雑に曲がった縞模様が学名のゆらいらしい。オス表面のブルーはややくすんでいて、オスでも黒い縁取りがあるが、この境界は不明瞭で、黒味を帯びたブルーに見える。この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集したが、これのみで、多い種類ではないと思われる。

Arhopala 属について

アローパラまたはアルホパーラとカナで表記されるが、この属は大変大きな属で、東洋区とオーストラリアにかけて約200種いると云われている。ここでは5種紹介したのみだが、

木曜社の「タイ国の蝶」の第3巻には96種が載っている。

日本産のムラサキツバメの学名はNarathura bazalus (日本産蝶類標準図鑑)とされているが、エリオットが監修した「マレー半島の蝶」やダブレラの東洋区の蝶パート3にもArhopala bazalus になっている。

「マレー半島の蝶」にはアローパラの種類が多いうえにゲニタリア(交尾器)の構造も似ているものがあり、種間雑種も知られ、同定は難しいものが少なくないとしている。オスの翅はシャイニングブルーのものが大部分で、一部緑色のものも含まれる。昼間はカシの木類の葉に止まり、夕方斜めに日光が射すと活発に飛び回るが、花に止まって蜜を吸うことはない。と書いてある。

いずれにしろ、多くの似た種類がいて、完全な標本でも同定に苦労するものがあり、一部破損した標本では種類が判らないこともある。分布の狭い地域特産のものも多く、今後研究が進み、種類のグループ分けや分布の実態が明らかになることを希望している。同定については素人にも判り易い、図入りの検索表が欲しいと思っている。