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インドネシアのシジミチョウの仲間(3)尾の2本あるシジミチョウたち

通常 尾と云われる尾状突起が2本あるシジミチョウは日本では少なく、キマダラルリツバメSpindasis takanonis が挙げられるだけだが、南の東南アジアには多くの種類がいる。この内、標本箱にあるものを幾つか紹介して見よう。

Hypolycaena sipylus シピルスフタオルリシジミ

シピルスフタオルリシジミ、左:表面、  右:裏面

Hypolycaena属にはインド、中国南部、からインドシナ半島、インドネシア、オーストラリアまで20種以上が知られているが、すべて2本の尾状突起をもっている。この種はスラウェシ、フィリピン、小スンダ諸島に分布するもので、この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集した。

 

Hypolycaena erylus エリルスフタオルリシジミ

エルリスフタオルリシジミ 左:表面    右:裏面

Hypolycaena属のシジミチョウをもう1種挙げて見よう。オスの表面は青く(ルリ色)で、尾状突起を2本持つが、裏面は日本産のゼフィルスに似ている。フタオルリシジミ属には青のチョウもいることを見て欲しい。このチョウはインドネシアの東側のハルマヘラ島、バチャン島などに分布している。この標本はバチャン島で採集した。

 

Dacalana anysis アニシスオビフタオシジミ



アニシスオビフタオシジミ(メス) 左:表面      右:裏面

このDacalana属は裏面に、写真右の様に、前翅と後翅にかけて白帯を持ち、尾状突起も2本ある。裏面の白帯からオビフタオシジミの和名が付いたと思われる。この種はインドネシアのスラウェシとその周辺の島に分布する種類で、スラウェシ南部のバンチッムルンで採集した。

 

Tajuria iapyx イアピクスヤドリギシジミ



イアピクスヤドリギシジミ 左:表面    右:裏面

ヤドリギシジミの食草にはヤドリギ科の植物が挙げられているが、マメ科、アジサイ科をあげている文献もある。Tajuria属はインドから中国南部、台湾からフィリピン、インドネシアにかけて30種以上が知られていて、2本の尾状突起を持つ種類である。台湾産のカレンコウシジミと同じ属である。このイアピクスヤドリギシジミはブルーの表面が狭く、前翅の前方は黒い縁取りになっている。分布はスラウェシ島とその近くの島のみになっている。この標本はスラウェシ南部産のものである。

 

Tajuria cyrillus キリルスヤドリギシジミ

キリルスヤドリギシジミ  左:表面     右:裏面

この写真のチョウもヤドリギシジミの仲間で2本の尾状突起をもっている大型のシジミチョウである。分布はスラウェシとなっていて、バネ・ライトの報告にはスラウェエシの中部・南部と書いてある。この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集した。

 

Rachana jalindra カワセミフタオシジミ



カワセミフタオシジミ  左:表面     右:裏面

このチョウはオスの表面のブルーが美しいチョウで、尾状突起は2本持っている。ダブレラの図鑑ではEliotia 属にされていたがタイ国の蝶(2014)ではRachana 属に替わっていた。この種はインド南部からインドシナ半島、インドネシア、フィリピンと分布が広いが、フィリピンにはRachana 属のチョウが5種いるとされている。しかし、このカワセミフタオシジミは普通種ではなく、地域が限られる種とされている。この標本はインドネシアのバリ島の北にあるカンゲアン島で採集されたものである。

 

Remelana jangala ウラクロフタオシジミ

ウラクロフタオシジミ    左:表面     右:裏面

ウラクロフタオシジミのオスの写真を示す。表面にはブルーの斑紋を持ち、2本の尾状突起がある。裏面では後翅下部の金属光沢のある斑紋が目立つ。

このチョウの分布はインド北部、中国南部からインドシナ半島、インドネシア、フィリピンと広い。この標本はスラウェシ南部のバンチムルンで採集した。和名にウラクロと云われるが、これはタイ産のものへの命名で、スラウェシ産は裏面が黄色味を帯び、R.jangala orsolinaと別亜種になっている。